アンケートからインサイトへ。データドリブンで切り開くビジネス戦略
データドリブンとは、過去の経験や勘だけでなく、収集したデータを中心にして意思決定を行う方法論の一つです。データの分析結果をもとにビジネス戦略における判断やアクションを行います。
本記事では、アンケート調査から得たデータを分析し、ビジネスに役立つインサイトへと至るデータドリブンなプロセスについて解説します。データを単なる情報源ではなく、ビジネスの成長の原動力としてどう使うか、具体的な事例を交えて紹介しています。
アンケート調査によって集めたデータを最大限に活用し、データドリブンなアプローチでビジネスを成功に導きたいと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
このページの目次
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アンケート調査によるデータドリブンアプローチとは
データドリブンなアプローチにおいて、まず最初に行うことはデータを集めることです。データには、社内にある売上データやマーケティングデータ、Webサイト分析のデータや外部の市場調査データ、実験結果データなど、目的に応じてさまざまなデータと収集手段があります。
ビジネスを成功させるためには顧客のニーズや市場の動向を把握することが不可欠です。そのためには、アンケートを活用するのが一般的な方法です。
アンケート調査を実施しただけでは不十分です。アンケート調査で集めたデータを適切に分析し、そこからビジネスに役立つインサイトを導き出すことが重要です。
そこで、アンケートからインサイトへ至る、データドリブンアプローチの6つのステップを解説します。
ステップ1.アンケートの目的の明確化
最初に、アンケートを実施する目的を明確に定義します。例えば、特定の問題の理解、顧客の意見の収集、市場トレンドの把握などがあります。
役立つデータを収集するためには、アンケートの目的の定義、仮説やゴールの設定が重要です。
ステップ2.アンケートの設計
質問の設計
シンプルでわかりやすい質問にしましょう。定量的な質問と定性的な質問を適切に組み合わせることで、広範なデータを収集できます。
- 定量調査
- 特定の質問に対する回答を数値化します。
- 客観的な統計分析を通じて、大量のデータからトレンドやパターンを特定するのに適しています。
- 市場規模、顧客満足度などの具体的なデータ収集に有効です。
- 定性調査
- 質問への自由な回答(意見、感想など)を通じて、より詳細な情報を収集します。
- 顧客の意見や感情、動機などの質的なインサイトを得て、深い理解を可能にします。
- 特定の製品やサービスに対する顧客の意見や提案など、より具体的なフィードバックを得るのに適しています。
ターゲット群の選定
アンケートの目的に基づいて、アンケートの対象となる人々を選定します。
ステップ3.アンケートの実施
オンライン調査、電話調査、対面調査など、目的に応じた方法でアンケートを実施します。
以下の記事で、オンライン調査に役立つWebアンケートシステムの選び方とおすすめのクラウドサービスを紹介していますので参考にしてください。
ステップ4.データ整理と分析
収集したデータを分析し、パターン、傾向、相関関係、統計的な重要性などを特定します。データ分析には、統計手法、データ可視化、機械学習などのツールや技術を使います。これにより、有意義なインサイトやトレンドを抽出することが可能になります。
ステップ5.インサイトの抽出と活用
データ分析による結果を基に、問題や課題に関するインサイトを得ます。これによって問題の根本や影響する要素を深く理解し、適切な対応策の計画のための土台を作ります。
そして、得られたインサイトを活かして、戦略的な判断を下します。アンケート調査の結果を基に、製品やサービスの改善、マーケティング戦略の見直し、プロセスの最適化など、具体的なアクションプランを立てます。
ステップ6.プロセスのループと改善
データドリブンアプローチは、継続的なプロセスです。収集されたデータから得られた情報を用いて、定期的に意思決定を改善し続けることが重要です。新たなデータを収集して分析し、インサイトを得て、アクションを調整するサイクルを繰り返します。
【ビジネスシーン別】効果的なアンケート調査の実施方法とデータの活用
効果的なアンケート調査とは、正確なデータ収集とそのデータを実際のビジネス戦略に活用することを意味します。アンケート調査の成功は、質の高い質問の設計、適切な対象者の選定、そして収集されたデータの有効な分析にかかっています。データドリブンなビジネス戦略では、これらのアンケート結果を活用して、市場のトレンドを把握し、顧客のニーズに応える製品やサービスを開発します。
それでは、具体的にどのように活用されているか、ビジネスシーン別に紹介していきます。
例1: 電子製品メーカーの製品開発
- 目的:顧客のニーズを理解し、新製品の開発方針を決定する。
- アンケート調査の内容:
- ターゲット:既存の顧客と潜在的な新規顧客
- 実施手段:オンラインアンケートと店頭での調査
- 内容:顧客が求める製品の機能、デザイン、価格帯についての質問
- 分析方法:統計的手法を用いて顧客の好みや傾向を抽出し、顧客が好む価格帯と機能の傾向を明らかにする。
- 分析結果の応用:中価格帯で高機能な製品が好まれることが判明。この情報をもとに新製品ラインを開発した。
例2: レストランチェーンのメニュー改善
- 目的:顧客満足度を向上させるためのメニュー改善。
- アンケート調査の内容:
- ターゲット:定期的な来店客
- 実施手段:レストランのレシートに付随するオンラインアンケート
- 内容:好みの料理スタイル、価格帯、食事体験に関する質問
- 分析方法:収集したデータを分析し、顧客の好みやニーズのパターンを特定する。
- 分析結果の応用:データに基づいてメニューを改善した。
例3: オンライン小売業者の顧客満足度アップ
- 目的:顧客満足度の向上とリピート購入率の増加。
- アンケート調査の内容:
- ターゲット:ウェブサイトの利用者
- 実施手段:オンラインアンケートと購入後のフィードバックフォーム
- 内容:配送オプション、ウェブサイトの使い勝手、購買体験に関する質問
- 分析方法:顧客のフィードバックから不満点を特定し、ウェブサイトの使い勝手や配送オプションに関する問題点を解析する。
- 分析結果の応用:ウェブサイトのナビゲーションの改善と配送プロセスの最適化を実施した。
データドリブンなビジネス戦略におけるアンケート調査の成功事例
アンケート調査はビジネス戦略において多様な形で成功を収めています。
本章では、アンケートを利用して顧客のニーズを把握し、それをビジネス戦略に応用して成功を収めた事例を紹介します。
成功事例1:オムロンフィールドエンジニアリング株式会社
オムロンフィールドエンジニアリング株式会社は、約130の拠点と1,200名のカスタマーエンジニアを有する企業で、顧客との接点から得られる情報を十分に活用できていないという課題を抱えていました。そこで、Webアンケートを導入し、全国の接点から顧客の声を集約することで、迅速なサービス改善と新たなビジネスチャンスの創出に繋げました。この取り組みにより、約2ヶ月で約100件のフィードバックが集まり、約20件の新規顧客との商談に成功しました。また、部門間の連携強化や情報記録の効率化にも繋がったそうです。
全国130拠点での接点のVOCを集約するインターフェースとして活用。迅速な対応に繋げ、顧客満足度を向上 – クリエイティブサーベイ
成功事例2:メガネスーパー(株式会社VHリテールサービス)
メガネスーパーは、Webアンケートを使用して消費者の意見やアイデアを収集し、新製品のメガネを開発しました。その際、アンケート結果をもとに、蝶番のデザインやロゴ、商品名などの重要な要素が決定されました。この新作メガネは発売1ヶ月で類似デザインのフレームと比べて7.4倍の売れ行きを記録し、大きな成功を収めました。消費者の感じ方を理解することが、商品開発において非常に重要であるという貴重なデータが得られました。
成功事例3:株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
株式会社ディー・エヌ・エーでは社員に対して月1回「キャリアマネジメントアンケート」を実施。その結果によると約4割の社員が能力を十分に活かせていない、またはやりがいを感じていないということがわかりました。これに対応し、同社は従業員が自由に異動先を選べる「シェイクハンズ制度」を導入しました。
シェイクハンズ制度のスタートは、すべての正社員が集まる全社会議があって、そこで南場が発表したんです。
当然、どよめきましたね(笑)。「自分の部署から人がいなくなるんじゃないか」という懸念も当然出てきます。
https://hrnote.jp/contents/b-contents-composition-denashakehands-180917/
これにより、社内環境の改善と適材適所の実現が促進され、社員のキャリア開発や職場での充実感が向上したそうです。インパクトのある制度のようですが、きちんとしたアンケートに基づいた判断のため成功に繋がりました。
「マネージャーの意識が変わった」DeNA人事制度シェイクハンズ|運用から1年経った感触を聞いてみた | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE
これらの事例からわかるのは、アンケート調査がデータドリブンな意思決定において重要な役割を果たし、ビジネス戦略の成功に大きく貢献しているということです。明確な目的設定、適切な質問内容の設計、そして効果的なデータ活用が成功の鍵となっています。
アンケートを成功させるコツは?
アンケートを成功させる手法が学べる、たくさんの書籍も出ています。
たとえば、桶谷功氏の著書「インサイト実践トレーニング」には、マーケティングに関するプロフェッショナルなインタビュー技術について、多くの洞察が含まれています。 特に、プロにしかわからないインタビューのコツとして、次のようなポイントが挙げられています。
インサイトとプロポジションは両輪:消費者の心を満たす商品を通じた価値提案が重要です。インサイトを見出すだけでなく、それに対して自社が何を提供できるかを考える必要があります。
「売れる理由」ではなく「買いたい気持ち」を考える:企業側の視点ではなく、消費者の視点で、提供者側の論理ではなく、買う人の気持ちを深く理解することがポイントです。
直接「なぜ」を聞かない:インサイトを探るための調査手法として、被験者が選んだ写真に直接的な理由を聞かず、その写真のどこに注目したかを確認する方法が効果的です。
これらのコツは、インタビューを通じて消費者の本音を引き出し、マーケティング戦略に活かすための重要な要素となっています。興味がある人は書籍を購入されるのもお勧めです。
まとめ
ここまで、アンケート調査から得たデータを分析し、ビジネスに役立つインサイトへと至るデータドリブンなプロセスとビジネス戦略の重要性を詳しく解説しました。市場の動向を正確に捉えて、顧客のニーズに応えるためには、データ中心のアプローチが非常に重要です。特に、アンケート調査によって得られるデータは、顧客のニーズを深く理解するのに最も適した方法と言えるでしょう。
これからの時代、どのようにデータをビジネスに応用するかが、競争力を左右する重要なポイントになります。この記事で得た知識を活かし、データに基づいた意思決定を積極的に取り入れることで、ビジネスの成長に役立てていただければ幸いです。